令和5年1月号 更正願い半世紀 少年院でそろばん指導 大西信二さん

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高校の教壇に立つ大西さん 授業の空き時間に少年院で指導しました

高校の教壇に立つ大西さん 授業の空き時間に少年院で指導しました

更正願い半世紀 少年院でそろばん指導

大西(おおにし)(のぶ)()さん(82歳・成田西町)

「少しでも優れた、誇れるものを持ってほしい」と、更正施設の浪速少年院(茨木市)でそろばんを指導し今年で50年。珠(たま)をはじいて計算するおもしろさに目覚めた多くの少年たちが検定試験の合格証書を手に社会に復帰していきました。

「償いに」と少年院で指導

少年院で指導を始めるきっかけは昭和48年4月の出来事でした。商業科の教師として高校の教壇に立って10年目のこと。担任するクラスの生徒が春休み期間中にトラブルを起こし少年院に収容されたのです。顧問をしていた部活動の部員でもあった生徒に面会するため何度も訪れ、担当教官から「少年たちにそろばんを教えてほしい」と頼まれました。

高校と相談し「せめてもの償いに」との思いから引き受け、その年の7月から空き時間を利用して毎月2日間指導。多いときには一度に70~80人も教えました。

「商人の子は出来んとあかん」と

木材商の二男として生まれ、小学校3年生からそろばんを習いました。その頃、銀行や商店ではそろばんが大活躍。「商人の子どもはそろばんの一つも出来んとあかんと言われ、6人きょうだいの全員が習っていました」。

立命館大学では珠算研究部に所属し、通っていた塾の先生に勧められて在学中にそろばん教室を開設。元々教師になるつもりはなかったそうですが、「部の先輩たちが取っていたので」と教員免許を取得し、高校で珠算実務や簿記を担当しました。

「努力すれば誰でも上達」

勤務が私立高校だったため教室は運営できましたが、46歳のときに退職。それでも少年院での指導は続けました。「そろばんは努力すれば誰でも上達します」と言い続け、意欲と目標を持ってもらうために珠算競技大会や日本商工会議所の検定試験も行ってきました。

少年院生活は平均で13か月ほどですが、高校の教え子は2級に合格して社会復帰。別の少年は3級に合格したときの思いを「珠算に限らず、努力によって身に付いた能力は自信になります」と合格証書を手にした喜びを作文に綴りました。

「培った能力、将来に生かして」

悩み事を聞いたり、面談や講話を行ったりする篤志面接委員としても少年たちと接してきました。こうした活動が認められて平成28年に藍綬(らんじゅ)褒章を受章。昨年には2冊目となる指導者向けの冊子『珠の響きPART2』を出版しました。

今年設立100周年の浪速少年院で、そろばん指導50年の節目を7月に迎えます。この間の教え子は約5000人を数え、「合格証は努力の証し。そろばんで培った努力を信じる心と能力を将来に生かしてほしい」と少年たちにエールを送ります。

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更新日:2022年12月23日