令和6年度市政運営方針(令和6年2月29日)

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令和6年3月市議会定例会における広瀬慶輔市長の市政運営方針です。(令和6年2月29日)

本日、3月市議会定例会に当たり、令和6年度の「市政運営方針」を申し上げます。

1 はじめに

【令和6年能登半島地震について】

本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、マグニチュード7.6、最大震度7という規模で、石川県を中心に甚大な被害をもたらしました。この地震によって多数の尊い命が犠牲となり、現在も多くの方が避難生活を余儀なくされています。

改めて、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表します。また、被害に遭われた皆様に謹んでお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

本市域においても、マグニチュード9クラス、約3分の1の建物が全半壊するなどの甚大な被害が想定されている南海トラフ地震が近い将来に極めて高い確率で発生すると言われています。

本市では既に、避難所でのプライバシー確保や感染予防のため、各避難所に屋外用テントを配備しております。あえて屋外用のテントとすることで、避難所のキャパシティーを超える最悪の事態にも、屋外にテントを持ち出し、受入れを拡大することも可能となります。

また、全市立中学校の屋内運動場に導入した空調機は、平常時はコストの安い都市ガスを、災害時には陸送が可能なプロパンガスで稼働でき、加えて発電機能も備えていることから、災害によって電源が喪失している状況下にあっても避難所の空調機や電気を維持できる設備として導入しております。

今回の地震は対岸の事象ではなく、同様の危機と常に隣り合わせであることを意識し、市民の皆様の命を守るための備えを更に進めていくことを改めて強く決意したところでございます。

被災地支援に派遣した職員によるグループワークなどを用いた、実際の災害現場における危機的な状況や切実なニーズを真に捉えた備えを、スピード感を持って進めてまいります。

【2つの危機に対する政策立案の戦略的な考え方】

昨年5月、2期目の市政運営をスタートいたしました。市長の職を担うに当たり、本市の課題として考えていることは1期目と変わらず、「市民サービスの危機」「公共施設、都市インフラの危機」という2つの危機にいかに対応していくかであります。

この2つの危機は、高齢化による財政収入の減少と、社会保障費の増大や公共施設、都市インフラが一斉に更新時期を迎え、財政支出が増加することによるものであり、本市の将来的な市民サービスの質と量を維持することは困難となってまいります。

今、少子高齢化を背景に、本市も含め全国的な人口減少が進んでいます。そのような中にあっては、人口の自然動態の減少はやむを得ないと考えておりますが、一方で、転入転出による人口の社会動態の減少は、市の取組によって改善可能であると考えております。

そのため、私は市政運営のかじ取りを始めた当初から、経営の観点に立ち、大きく2つの体系で政策を展開してまいりました。

1つ目は、本市を市内外から「選ばれるまち」とするための対外的な戦略の政策であります。

現在「選ばれているまち」には、新住民の誘引につながる「経営資源」があり、それらの組み合わせによって競争優位が生み出され、まちが選択される際の判断に大きな影響力を持っております。

様々な自治体という選択肢がある中で本市が「選ばれる」ためには、他の自治体に対する競争優位を備えることが必須であります。

本市における新住民の誘引につながる経営資源を俯瞰(ふかん)した場合、他市との競争優位を確立するには十分とは言えません。それならば、優位性を補強しなければなりませんが、街並みやインフラ整備など、ハード面での優位性を新たに作り出すことは、膨大な費用と時間を要するものであり、自ずから限界があります。だからこそ本市は、長年解決されていない市民生活における全国共通の課題等に対して、先進的で独創性が高く、課題の本質を捉えた社会的変革を起こす可能性があり、他の自治体に新たなスタンダードを発信することにもつながる政策の立案、展開によって、競争優位を構築していくことを選択いたしました。

この分野においては、全自治体に優位性確保の機会があり、本市においても、経営の観点から戦略的に取り組むことで十分に対応することができると判断したものであります。

本市では、これを「寝屋川水準の政策」と位置付け、スピード感を持って展開しているところであり、政策において最先端の自治体として、競争優位の確保とブランド力の向上を目指しています。

2つ目は、今住まれている市民の皆様の困り事や不便を解消し、市民満足度を向上させていく、「市特有の課題を解決する」ための政策であります。

これはまず、新たに設定した「市民サービス改革の3原則」である、1「市民の事情>(大なり)行政の都合」2「市民を動かさない」3「市民を待たせない」の下、これまでの既成事実や既成概念に縛られず、今ある地勢や現況を再度見直し、長期的な市民サービスの姿を見据えた明確な答えを、政策として市民の皆様に提示していくものです。

このように、大きく2つの体系からなる政策を計画的かつ戦略的に実施し、対外的に本市が「担税力のある子育て世代」から「選ばれるまち」となるとともに、市内における「市民満足度の向上」を同時に達成することで、「評価される市役所」として、持続可能なまちの実現へと取組を進めているところであります。

それでは、経営の観点から私が考えるそれぞれの体系の政策について申し上げます。

【全国のスタンダードとなる「寝屋川水準の政策」】

全国共通の課題であり、未だ解決されていない事案に対する「寝屋川水準の政策」は、その政策自体が「メディア」としての役割を果たし、本市のブランドにつながるものであることから、競争優位を構築し「選ばれるまち」を目指す本市にとって欠かせないものであると考えております。また、その政策が全国の自治体においてスタンダード化されるまでには、相当の期間が必要であり、その間、本市にはリーディング自治体としての競争優位が持続することになります。

加えて、こうした全国の先進事例となる政策は、立案から実施の過程のみならず、全国自治体からの視察対応などによって市職員のスキルや能力の将来にわたる向上にもつながってまいります。

「寝屋川水準の政策」は、こうした市の対外的な競争優位を生み出すと同時に、言うまでもありませんが、今正に本市にお住まいの皆様の満足度を高めるサービスとなるものであることにほかなりません。

これまでの成果としましては、本市独自のいじめ対策の取組として、令和元年10月、市長部局に「監察課」を設置し、従前にはなかった行政側からいじめ対応のアプローチを行う体制を構築するとともに、市立小中学校の全児童生徒やその保護者を対象とするいじめ通報促進チラシ等を配布する「攻めの情報収集」などを行ってまいりました。

また、寝屋川市駅前に、「サードプレイス」をコンセプトとして開館した新たな中央図書館は、オープン以降大変多くの方に利用していただくとともに、表彰を受けるなど、市内外から注目される施設となりました。

教育においては、寝屋川だから学べる「寝屋川教育」の確立に向け、ディベート教育による論理的思考の育成に取り組み、昨年12月には、市内全校での予選会を勝ち抜いた市立小中学校各6校の代表児童生徒によるディベートマッチ「D-1グランプリ2023」を開催いたしました。そして、「令和5年度全国学力・学習状況調査及び学習到達度調査」において、小学校全学年の国語と算数の2教科が全国平均を上回り、中学校においても、複数の教科で全国や大阪府の平均を上回るなど、子どもたちの学力が着実に向上しております。

また、市独自の「就学前教育・保育プログラム」を策定し、0歳から15歳までの切れ目のない子育て・教育環境の実現に向け、取組を進めております。

そして先ほども触れました、全市立中学校の屋内運動場における、災害時においてプロパンガスでの稼働が可能な空調機の導入については、「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」の最優秀賞をいただいたところでございます。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際し、他市に先駆けて実施いたしました「学校の選択登校制」や「授業のライブ配信」、感染者等への配食サービス、介護施設従事者等への定期PCR検査などについては、市民の皆様から、「安心できる」というお声を多数いただくだけでなく、メディアでも先行事例として多く取り上げていただきました。

そして、市職員の「働き方改革」では、全国で初となる完全フレックスタイム制の導入や、ICTの活用、業務の断捨離などによって、望まない残業は、令和元年度102,000時間から着実に削減を図ってまいりました。しかしながら、大規模災害級の事象であった新型コロナウイルス感染症への対応で、臨時の業務量が大幅に増加し、その業務量は削減した業務量を上回るものであったため、結果として削減できていることの実感を得るまでに至ってはおりませんが、コロナ禍後のこれからは、これまでの取組による成果が正に顕在化し、職員一人一人の実感につながるものと考えております。

また、一度退職した職員に復職の機会を提供する再チャレンジ制度の導入や、長期の育児休業を取得する職員に対し、正規職員を配置する新たな市独自の制度も構築してまいりました。

これら「寝屋川水準の政策」の多くは、他市に先駆けて実施したことから、メディア等でも「寝屋川モデル」として注目をされ、他市が追随する動きを見せています。

特に、安心して学べる教育環境を整備するためのいじめ対策の取組は、国が全国のスタンダードとする動きを見せるなど、本市の競争優位を生むと同時に、多くの自治体やメディアからの注目を集め、全国に本市の存在感を大きくアピールし、本市のブランドにつながっているものと考えております。

【市民満足度を高める市特有の課題を解決する政策】

2つ目の体系である、本市特有の課題やニーズを解決することによる市民満足度の向上を図る政策でございます。

2つの危機の解消に向け、人口の年齢構成のリバランスを図るため、京阪本線、JR学研都市線の2つの鉄道軸が交互に支え合い、持続的に成長し続けるまちの実現を目指す「2軸化構想」を進めるとともに、あらゆる世代の利便性と市民サービスの向上、公共施設の利用効率の最大化とダウンサイジングを図る、市民サービスの「ターミナル化構想」を推進してまいりました。

これまでの取組においては、寝屋二丁目・寝屋川公園地区における土地区画整理準備組合の設立といった新たな市街地の整備に向けた取組や、日本を代表する建築家の隈研吾氏が設計監修し、まちのメインアイコンとなる施設一体型小中一貫校である、望が丘小学校・中学校の校舎棟が昨年12月に完成し、この4月に開校を迎えるなど、「2軸化構想」の実現に向けた取組を着実に実施してまいりました。

また、市民サービスの「ターミナル化構想」として、新たな中央図書館の開設や、大阪電気通信大学駅前キャンパスを取得し、「(仮称)駅前庁舎」の整備を進めてまいりました。

そのほか、温かい中学校給食の提供に向けた取組や「0歳から2歳までの第2子以降の保育所等保育料無償化」と「市立中学校給食の無償化」の「2つの無償化」、さらには母子健康手帳アプリの導入、保育所等における兄弟姉妹の同時入所を可能とする基準の見直しやおむつの持ち帰りを不要とする「バイバイおむつ事業」の実施など、子育て世帯の多様なニーズにも柔軟に対応するとともに、シルバー世代の皆様のニーズへの対応として、外出支援となる乗合い事業の試験運行、バス利用券の配布など、市民生活全般にわたり、細やかにニーズを捉えた取組を進めてまいりました。

【「変化」の兆し】

市長就任からこの間、まちに「変化」を起こし、「メディア」としての効果を有する政策の実施や施設を整備し、私自らが先頭に立ち、プロモーションを行ってまいりました。

これまでの取組で、本市には競争優位が生まれつつあり、市内外からのイメージや評価は「変化」の兆しを見せております。

例えば、市の人口動態では、令和3年には市の人口が9年ぶりの転入超過となりました。また、令和5年大阪府地価調査上昇率順位において寝屋川市本町が2位となり、加えて、民間企業の調査においても本市は居住地としての高評価をいただくなど、相対的な数値や評価において良い方向へと「変化」が表れております。

こうした私の考えに基づく「全国共通の課題を解決する政策」「市特有の課題を解決する政策」は、それぞれ「選ばれるまち」や「市民満足度」につながるものであり、昨年8月に実施した市民意識調査におきまして、市長を始めとする特別職の市政運営について、9割近い市民の皆様に肯定的な評価をいただくことができたところであり、そうしたことを踏まえ、市長1期目に続き、2期目においても2つの体系に基づく政策を展開し、市内外における本市の「変化」を更に加速してまいります。

2 まちづくりの基本方針

2期目の市政運営を進めるに当たり、今までのやり方や制度をより良いものにする「改善」ではなく、市民のニーズ等を的確に捉え、市が持つ経営資源としての強みやポテンシャルを活用し、新たな価値を創出する「イノベーションを起こす投資」を戦略的に進めてまいります。

令和6年度は、所信表明でお示しした「変化」を具現化していく重要な年度であり、先に御説明した2つの体系の政策について、戦略的かつスピード感のある政策展開を図ってまいります。

【「寝屋川水準の政策」の展開】

「寝屋川水準の政策」は、他市に対する本市の競争優位を生み出し、「選ばれるまち」となるために欠かせないものであります。これまでの取組に加え、令和6年度も更にその展開を加速させていかなければなりません。

本市は「担税力のある子育て世代」の誘引を目指しております。

子育て世代がまちを選ぶ際に重視するポイントとして、一般的には子育てに適した緑や公園、街並み等といった住環境が挙げられます。

この点において、残念ながら本市よりも優れたまちは多くあり、短期間で逆転していくことは極めて難しいものであります。

しかし、子育て世代の判断を左右しているのは、本当に住環境だけなのでしょうか。私はそうは思いません。そう申し上げるのも、子どもが大きくなるにつれ保護者に共通して話題となるのは「教育」だからです。

私は、この「教育環境」こそが住環境に匹敵する子育て世代がまち選びにおいて重視するポイントであり、この分野であれば、「寝屋川水準の政策」を立案することで、短期間で競争優位を生み出すことも可能であると判断いたしました。

選ばれる教育環境としていくためには、評価される教育としての柱が必要です。

子どもたちの現状を見たとき、急速な社会構造の変化等による家庭環境の多様化や、そこから生じる様々な格差による子どもたちへの影響が懸念されます。子どもたちがそうした自らを取り巻く環境に左右されることなく、たくましく生き抜くためには、自ら「考える力」を身に付け、「精神的自立」をもたらす必要があると考えております。

そのことを踏まえ、市長就任後、まず取り組んだのは、地域別あるいは個別の学校ごとの特色化を推進するよりも先に「寝屋川市の教育の特色化」を進めることでした。寝屋川市ならばどこの学校でも施設でも安心して同じ質の高い教育を受けることができる体制へと転換し、その上で、子どもたちの「考える力」の育成を「寝屋川教育」の柱と据え、論理的思考を育成する土台となるディベート教育を全校で一斉にスタートするなど取組を展開してきたところでございます。

さらに、これまでの取組をより発展し、競争優位を確立させていくために重要となってくるのが、小中学校の教育へとつながる就学前の教育・保育であります。

就学前の教育・保育についても、専門家の協力により市独自で研究を重ねたプログラムの下、各年齢に応じた「考える力」を育成していくことで、小中学校へとスムーズにつながり、切れ目なく0歳から15歳までの15年一貫した“心柱(しんばしら)”の通った「寝屋川教育」を実現することができ、これにより本市は「持続可能な競争優位」の獲得を目指すことになります。

令和6年度は、子育て支援を充実していくとともに、市独自の就学前教育・保育プログラムに基づくエージェンシー型の就学前教育を推進してまいります。

また、新たに定めた「教育大綱」に基づく教育政策をスタートし、本市だからこそ学ぶことができる特色ある「寝屋川教育」として、引き続きディベート教育を始め、「寝屋川スタンダード」の充実など、子どもたちの「考える力」を育成してまいります。

加えて、国や全国自治体から「寝屋川モデル」として注目されているいじめ対応を始め、寝屋川市駅前という高い利便性を有する立地において、子育て支援機能を併せ持つ「(仮称)こども専用図書館」の整備を着実に進めてまいります。

また、公園は子育て世代の誘引に欠かせない重要な要素であります。

特に南寝屋川公園については、その広い敷地に加え、都市計画道路萱島讃良線の整備によるアクセス性の向上や、大規模な駐車場を備えた商業施設のイオンモール四條畷に隣接しているといった、まちの新たなメインアイコンとなり得るポテンシャルを有しており、令和6年度は、地域性を捉えた特徴ある施設とするための基本計画を策定してまいります。

競争優位を生み出すのは、子育てや教育に係る政策だけではありません。

来る南海トラフ地震などの大規模な自然災害に対し、職員が災害派遣の現場で得た実体験を活かして行う「リアルな災害対策」は、本質を捉えた安心となり、多くの共感へとつながっていきます。実際、令和6年能登半島地震の際は、本市が避難所に配備しているテントや、災害時のエネルギーインフラの遮断時においてもプロパンガスの利用によって使用できる空調機については、多くの反響をいただきました。

令和6年度は、避難所機能をより充実するため、全ての市立小学校の屋内運動場や各コミュニティセンターの体育館への空調機の設置を進めるとともに、市民の皆様に「今そこにある危機」を認識し、自助・共助の防災意識を一層高めていただくため、市域一斉に避難所開設訓練等を行う「(仮称)市民大訓練」を実施いたします。

対外的訴求力を有する政策は、市内外に正確かつ効果的に伝達され、初めてその目的を果たすことになります。他の自治体との相対評価で住むまちが選ばれる時代においては、いかに伝わり、いかに認知され、いかに評価されるかが問われます。

こだわりの政策や施設は、市の考え方や方向性を自動的・持続的に発信し続ける「メディア」としての効果があります。市広報誌や動画等の情報媒体での発信とともに、メディア効果を意識した政策展開や施設整備によって、本市の「変化」が実感されるよう、戦略的に取組を進めてまいります。

【市特有の課題解決に向けた政策の展開】

「選ばれるまち」となるための取組とともに、重要となるのは、市民の皆様の満足度を高める取組を展開していくことであります。現在、市民が困っている、あるいは、将来困るであろう課題に対し、解決策となる政策に取り組んでいくことが、結果として市民満足度の向上につながっていくものと考えております。

また、「評価される市役所」として、市民に「行政の都合」のしわ寄せを押し付けるのではなく、市民に寄り添い、「市民の心を動かす」サービスの提供を目指し、「市民の事情>(大なり)行政の都合」「市民を動かさない」「市民を待たせない」を原則とする「市民サービス改革」を更に加速してまいります。

市民とまちの将来を見据えた取組も進めていかなければなりません。「2軸化構想」の実現に向け、積極的なまちのリノベーションを推進してまいります。

本市の公共施設の多くが築50年を経過しており、維持・更新に多額の経費を要することが想定されることや少子高齢化を背景とした人口減少も含め、単に、現在の施設総量を将来にわたり維持するということではなく、「施設機能の集約化・複合化」をキーワードとして、市民サービスを向上させつつ、施設床面積をダウンサイジングするといった、一見相反するように見える極めて困難なミッションに戦略的に取り組んでいかなければなりません。

そのためには、本市が人口急増期に分散して設置した公共施設の再配置が不可欠であり、その検討は大きく3つの配置類型区分、1「ターミナル施設」2「準ターミナル施設」3「地域施設」で行う必要があると考えております。

1つ目は「ターミナル施設」です。例えば、市役所等の行政サービス提供機能や市民サービス提供に係る中核施設など、市民全体を対象とし、多様なニーズに対応した市民満足度と利用率の向上を図るために、一定の規模が必要な施設や機能は、市の地理的な中心部であり、公共交通の結節点である寝屋川市駅周辺に、サービス提供のための中核施設として配置するものです。

2つ目は「準ターミナル施設」です。本来、ターミナル施設として配置される施設機能のうち、利用者数が多く、かつ、日常的・継続的な利用が想定されるなど、より近い生活圏への配置が求められる施設や機能については、交通利便性やアクセス距離等の利便性を考慮して、市内各駅周辺に配置するものです。

3つ目は「地域施設」です。学校園やコミュニティセンターなど、地域に密着し、地域コミュニティの拠点となる施設・機能は、今後も地域ごとにバランスを考慮して配置していく必要があります。

令和6年度は、こうした考えの下、新たに策定する予定の「公共施設適正化検討方針」に基づき、シルバー世代等がより利用しやすい環境としつつ、効率化と利便性向上を同時に実現することを目指し、今後、改定を含めた検討を進める「市民サービスの『ターミナル化』推進計画」等を踏まえ、市域に点在する施設機能の計画的な集約化・複合化を進めてまいります。

また、これまでの政策展開によって「本市が変わってきた」という声をいただくことが増えてきております。このまちの「変化」をより多くの市民の皆様の実感へとつなげていくため、日々の生活において「変化」を感じられる、まちの美化などをテーマとしたマナーの向上について市を挙げた取組を展開してまいります。令和6年度は「(仮称)マナーアップ大作戦」として、子どもの健康を守る受動喫煙対策のため、路上喫煙禁止区域内での取締りを強化するとともに、市立小学校1・2年生を対象としたチャレンジテストによる交通事故の未然防止や防犯パトロールの拡充などに取り組んでまいります。

また、市民を「動かさない」「待たせない」を基本コンセプトとして、申請手続等に係る市民の負担軽減や利便性の向上を図るため、「(仮称)駅前庁舎」における窓口のワンストップ化などを進めてまいります。

最後に、「選ばれるまち」「市民満足度の向上」につながる極めて困難な課題解決に挑戦していく本市にあって、それを実現していく職員には、これまでのような定型的かつ固定的な働き方ではなく、自由で柔軟な働き方ができる環境がますます必要となってまいります。全国初の導入を行った完全フレックスタイム制度の活用等によって、業務量の平準化に個人、組織で対応するなど、職員一人一人がこれまでの働き方改革による「変化」を実感できるものとしてまいります。

3 令和6年度の主要な事業

令和6年度予算は、事業の選択と集中を図る中で、積極的な「投資」の財源を生み出すための「マイナスシーリング型予算」を導入するとともに、引き続き「ネヤガワ式予算スケール」を活用し、編成しております。

それでは、令和6年度の主要な事業について申し上げます。

子育て・教育

「子育て・教育」に関する事業でございます。

待機児童対策の様々な事業を総合的に実施する「待機児童ZEROプランR6」を推進します。

市立保育所等における欠席・遅刻の連絡や保育日誌の確認をスマートフォンで行える保護者アプリを導入します。また、希望者に対し午睡用布団や紙おむつの持参を不要とする定額制のサービスを提供します。これについては市内の認可保育園にも協力要請を行っています。

子育て世帯の経済的な負担と不安の軽減につながる「第2子以降の保育所等保育料」と「中学校給食」の「2つの無償化」を引き続き実施します。

市立中学校の部活動において、教職員の働き方改革と、生徒が多様な部活動で専門的な指導を受けられるよう拠点校化を進め、部活動指導員とコーディネーターを配置し、部活動の段階的な地域移行を進めます。

市立小中学校の校舎棟トイレの洋式化について、「学校トイレリメイク緊急3か年事業」として、令和6年度から令和8年度まで順次改修工事を実施します。

更に温かくおいしい給食を目指し、引き続き「寝屋川市学校給食センター」の建設を進めるなど、拡大親子方式による提供体制を早期に構築します。

おいしくて栄養のある給食のため、小学校給食費を大阪府内平均水準まで改定することに対し支援を行います。

ヤングケアラーの適切な支援につなげるため、実態調査を行うとともに、家庭に訪問支援員を派遣します。

市民の学びや子育て支援の充実、市民相互の交流を進めるため、望が丘小学校・中学校に「望が丘地域交流スペース」を設置します。

寝屋川市駅前において、子育て支援機能を併せ持ち、子どもの学びと成長を支援する「(仮称)こども専用図書館」について、令和8年度の設置に向けた整備を進めます。

都市基盤・産業

次に、「都市基盤・産業」に関する事業でございます。

寝屋川市駅周辺について、本市の玄関口としてふさわしい空間整備に向け、駅前広場のリニューアルなどの「都市再生整備計画」を作成します。

萱島駅周辺エリアの持続的な発展に向け、「かやしまリノベーションプロジェクト」において、まちづくりの将来像等を定めた「まちづくりの将来ビジョン」を策定します。

まちの利便性と安全性の向上に向け、都市計画道路萱島讃良線の整備を推進します。

持続可能な交通社会と活力ある都市の実現に向け、「地域公共交通網形成計画」の改定を行います。

事故等による頭部損傷の事故率の高い65歳以上のシルバー世代を対象に、自転車乗車用ヘルメットの購入補助を行います。

京阪バスの3路線が令和6年3月31日に廃止されることから、緊急対応として、市において4月1日からコミュニティバスを定時定路線で運行します。

市民サービスの「ターミナル化」を更に推進するため、「(仮称)駅前庁舎」の開設に向けた改修工事を行うとともに、駐車場及び自転車駐車場を確保します。

桜のライトアップ期間の延長や新たな空間演出など内容を拡充し「ねやがわパーク事業」を実施します。

市内事業者の働き方改革の推進や福利厚生の充実等に関するユニークな取組を表彰する「ユニーク経営表彰制度」を創設します。

市内事業者の事業承継の円滑化への取組に向け、実態把握等の調査を実施します。

南寝屋川公園において夏休みに多くの子どもたちが安心して水遊びができる「ねやがわプールズ」を開催します。

危機管理

次に、「危機管理」に関する事業でございます。

市立小学校の屋内運動場に、災害によるエネルギー遮断に対応した空調機の設置を進めます。また、各コミュニティセンター体育館への空調機設置に向け、設計業務を委託します。

発災直後に地域住民が速やかに避難できるよう、避難所の開錠に必要な鍵やマニュアル等を格納した震度感知による自動開錠機能付き鍵BOXを全市立小中学校に設置します。

住民等へ防災情報などを伝達する防災行政無線の安定した運用とともに、音声の届く範囲の拡大や明瞭性の向上を図るため、高性能スピーカーを設置するなど防災行政無線の更新整備を進めます。

防災情報の充実を図るため、市内の水路等を常時監視できる暗視用カメラを設置し、市ホームページにおいて映像を公開します。

更なる犯罪抑止を図るため、新興住宅地等の必要な場所に防犯カメラを新設します。

福祉・健康・環境衛生

次に、「福祉・健康・環境衛生」に関する事業でございます。

重層的支援体制事業の開始に向け、庁内の連携体制と包括的な相談支援体制を構築します。

生活保護返還金等の回収率の向上と生活保護制度の信頼性の確保につなげる訪問催告を実施します。

不特定多数の人への危険性があると考えられる場所に営巣されるスズメバチの巣の駆除を実施します。

「上下水道事業経営戦略」について、今後10年間を見据えた計画として改定を行います。

更なるごみの減量化及び資源化を推進するため、ごみ質分析調査を実施します。

し尿及び浄化槽汚泥の処分について、交野市のし尿等共同処理施設の供用開始に先行して同市に事務委託を行います。

自治体経営

次に、「自治体経営」に関する事業でございます。

市民を「待たせない」「動かさない」窓口環境の整備に向け、「(仮称)駅前庁舎」の整備に合わせ、外出先等からスマートフォンで窓口の呼出状況が確認できるシステムを導入するとともに、低層階と高層階のやり取り等をデータで行うためのドキュメントスキャナーを導入します。

新たな情報発信の基盤として、幅広い世代に訴求力を持つ動画コンテンツを強化し、定期的に番組形式による配信を行います。

ふるさと納税ポータルサイトの拡充などを進めるとともに、企業版ふるさと納税を促進します。

「(仮称)駅前庁舎」の整備に合わせ、市税等の納付ができる公金収納機を設置します。

更なる業務の効率化等に向け、定型業務を自動化するAIやRPA等のデジタルツールを活用する対象業務を拡充します。

行政手続のオンライン化の更なる推進を図るとともに、各種証明書のオンライン申請の利用促進のための郵便料無償化を継続します。

4 結び

私は、年初め、本年一年を表す漢字として、「動く」を表現する「動(どう)」という字を選びました。

これは、これまで起こしてきた数々のまちの「変化」を更に大きいものへと「動」かし、市民の皆様の心を「動」かしていく、そんな一年にしたいという思いであります。

多くの市民の皆様からいただいた市政運営に対する高い評価や、「寝屋川市が変わってきた」という市民の皆様の感想を、一時的なもので終わらせるのではなく、確固たるものにしていかなければなりません。

寝屋川市は、およそ縦6キロメートル、横4キロメートルの面積24平方キロメートルという小さな市域に23万人が住む過密なまちで、ともすれば住環境の面では劣ることがあるかもしれません。しかしながら、職員らが政策立案のスペシャリストとして、市民や社会のニーズを的確に捉え、「メディア」としての効果を意識したこだわりの政策を実施していくことで、ダイナミックにまちの「変化」を起こし続けていけると、この数年の動きを見て確信しております。

このまちが持つ強み、ポテンシャルと、市民や社会が求めるニーズを正確に掴み、「持続可能な競争優位」を築くイノベーションとなる「寝屋川水準の政策」を立案・実施していく必要があります。

キーワードは「“こだわり”のまち寝屋川市」。社会的課題を解決する“こだわりの政策”と、小さくとも市民満足度の高い“こだわりの施設”などで、引き続きスピード感を持って寝屋川市のブランディング戦略を展開してまいります。

そして、市民、議会、職員の皆様からお力添えをいただきながら、「選ばれるまち」「評価される市役所」の実現に向け、全身全霊を込めて市政執行にまい進してまいります。

令和6年度当初予算案

 令和6年度当初予算案につきましては、

一般会計

990億9,000万円(対前年度比2.8パーセント増)

特別会計(国民健康保険特別会計 外4特別会計)

535億1,100万円(対前年度比0.9パーセント増)

公営企業会計(水道事業会計及び下水道事業会計)

191億7,900万円(対前年度比0.6パーセント増)

合計

1,717億8,000万円(対前年度比2.0パーセント増)であります。

議員並びに市民の皆様におかれましては、格段の御支援・御協力をいただきますよう、心からお願い申し上げます。

令和6年度当初予算主要事業概要は次のページからご覧いただけます。

用語説明

俯瞰(ふかん)

広い視野で物事を見たり考えたりすること、また、ある事柄や状況に対して客観視することをいいます。

イノベーション

画期的な技術や新しい仕組みを創造し、変革を起こすことで経済や社会に価値を生み出すことをいいます。

心柱(しんばしら)

中心に立てる柱のことをいいます。

まちのリノベーション

既存の不動産を再生させ、新しい機能や価値を付与することで、まちの魅力の向上、地域の活性化につなげる取組のことをいいます。

ダウンサイジング

コストダウンや効率化のために規模を縮小することをいいます。

ヤングケアラー

本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことをいいます。

AI

Artificial Intelligenceの略で、「人工知能」と訳されます。人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術、又は人間の知的営みを行うことができるコンピュータプログラムのことをいいます。

RPA

Robotic Process Automationの略で、これまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化することをいいます。

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更新日:2025年02月20日