市長所信表明(令和5年6月20日)

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令和5年6月市議会定例会における広瀬慶輔市長の所信表明です。(令和5年6月20日)

はじめに

令和5年6月市議会定例会の開会に当たり、今後4年間の私の市政運営に関する所信について、御披露させていただく機会を頂戴いたしましたこと、心より感謝申し上げます。

去る4月23日に執り行われました寝屋川市長選挙におきまして、大変多くの市民の皆さんの信託を得て、2期目の市政運営のかじ取りを担わせていただくこととなりました。

選挙活動の中で、たくさんの方々から寝屋川市の「イメージが変わってきた」「良くなってきたと感じる」といった声を多くいただきました。実際、NHKの市長選挙出口調査によると、私が担ってきた市政に対して、9割の市民が「評価する」と答えておられます。これは、これまでの4年間に進めてきた各施策に高い評価をいただくとともに、変化を実感していただき、また様々な機会を通じてお示ししてきた寝屋川市の将来ビジョンに対し、御信任をいただけたものと受け止めております。

市民の皆さんの御支持と御期待にしっかりとお応えできるよう、決意を新たにするとともに、改めて身の引き締まる思いであり、市民から「評価される市役所」となるために、引き続き、全身全霊で市長としての職責を果たしてまいります。

2軸化構想の推進と年齢構成のリバランス

4年前の市長就任時の所信表明において、「2軸化構想」を御提案しました。

昭和35年に5万人程度であった本市の人口は、わずか15年後の昭和50年には25万人を超え、当時、全国一の人口増加率(昭和50年国勢調査の人口10万人以上の市)を記録しました。特に、20~30代の若い世代が集中的に流入し、まちは飛躍的な成長を遂げました。この時期には、小中学校や道路、上下水道などの都市インフラが急ピッチで整備され、現在のまちの姿の原形を築く、まさに時代の転換期でありました。

それから約半世紀が経った今、直近の令和2年国勢調査における本市の高齢化率は、大阪府内都市や北河内7市の平均を上回るペースで高齢化が進行しており、この先、社会保障費の更なる増大が見込まれます。また、当時急ピッチで建設した公共施設の多くが今後一斉に更新時期を迎え、令和4年度からの30年間で2千億円を超える更新費用が必要と試算しています。

このまま対策をとらなければ、将来、公共施設を含む現在の市民サービスの質・量を維持することが、困難な状況に陥る恐れがあります。

こうした、今後直面することになる多くの課題が、昭和35年~昭和50年の急激な人口増加と、それに起因する本市特有の「人口の年齢構成のバランスの崩れ」によるものであることは明らかです。

人為的に崩れた人口バランスは、自然に修復されることはありません。「2軸化構想」は、現在の人口の年齢構成のバランスを、もう一度、「人為的に崩して再調整する」ことをミッションとする取組です。高いポテンシャルを持ち、開発余地が残されている「JR学研都市沿線」に、担税力のある子育て世代を誘引し、年齢構成をリバランスすることで、若い世代からの市税収入の増加等により、市民サービスの持続可能性を高めていくことができます。また、これにより次の50年後、学研都市軸で急激な高齢化が進んだ時には、人口の入れ替わりが進んだ「京阪軸」が「学研都市軸」をカバーすることが可能となります。

こうして、年齢構成のリバランスを図り、「2軸」が交互に支え合うことで、持続的に成長し続けるまちを実現することが本市には求められており、最優先の課題となっています。これが「2軸化構想」の要諦なのです。

まちのリノベーションのプロデュース

私は、いまの寝屋川市長の大きな役割の一つとして、「まちのリノベーションのプロデュース」があると考えています。市長就任当初から、子育て世代に「選ばれるまち」となるために、市内の鉄道駅エリアごとに、その地域の特性や長所を活かしたまちづくりを展開し、それぞれの魅力を高めるための取組を進めてまいりました。4年間という、まちづくりを行うには大変短い期間ではありますが、既に効果が表れ始めています。

御存知のとおり、寝屋川市には4つの駅があります。

このうち、「香里園駅」は大規模な再開発により、既に子育て世代から選ばれるまちとなっていました。例えるならば「日の当たるまち」となっていると言えるでしょう。

では、他の3駅はどうでしょうか。「寝屋川公園駅」は、高齢化と人口減少が進み、古くから営業を続けてきた商業施設が撤退するなど、マイナスのスパイラルに陥っていました。また、「寝屋川市駅」は、京阪本線の中でも屈指の乗降客数を誇るにもかかわらず、駅前周辺における人々の滞留が少ない状況となっていました。そして「萱島駅」は、シャッター街や空き家の増加が顕著となっており、これら3駅の現状は、まちの魅力や活力が低下している、又は十分ではないと言わざるを得ない状況となっていました。いわば「日が当たらないまち」となりつつあったとも言えます。

そこで、様々な課題を有するこの3つの駅が、「都市核」として生まれ変わるために、意図的に各駅の「コンセプト」を設定し、それに沿って各駅周辺に「アイコン」(象徴)となる施設を配置するなど、新たなまちをプロデュースすべく取組を進めてまいりました。

取組の一例を申し上げますと、まず、寝屋川公園駅周辺エリアにおいては、開発余地のあるこのエリアに担税力のある子育て世代を誘引するため、日本を代表する建築家の隈研吾氏がプロデュースし、子どもたちに「新しい時代の学生生活」を提案する施設一体型小中一貫校を、まちのメインアイコンと位置付けて整備を進めるとともに、広大で優良な寝屋川公園を活かしたまちづくりを推進しつつ、そのメッセージを積極的に発信しました。香里園駅が、交通や買物などのまちの「利便性を求める」子育て世代が中心ならば、寝屋川公園駅は、新たな学校や緑豊かな自然などの生活環境、「生活スタイルを重視する」子育て世代をターゲットにしています。

この結果、私が市長就任前の平成31年1月と直近の令和5年1月の人口動態を比べると、多くの小学校区で人口の減少が見られる中、明和小学校区では409人の増加、梅が丘小学校区では161人の増加となりました。全市域で少子高齢化による自然動態が減少しているにもかかわらず、当該校区の人口が増加となったことは、このエリアの新たなまちづくりの「メッセージ」が、極めて大きな影響と効果をもたらしているものと考えております。

寝屋川市駅周辺エリアについては、寝屋川市の地理的な中心部にあり、市内交通の結節点であるというその立地から、コンセプトとして、「行政の首都」と位置付け、「すべての市民が利用するサービス」、「市民の利用頻度の高い市民サービス」をここに集約する「ターミナル化構想」を推進しました。令和3年8月には新たな中央図書館をオープンし、昨年末には累計来館者数が50万人を超え、多くの市民の皆さんから喜びの声をいただいております。さらに今後は、利用者数が多く、また利用頻度の高い市民サービス機能を集約する「(仮称)駅前庁舎」の設置や、「新たな時代の子育て支援」機能を併せ持つ“拠点”としての「(仮称)こども専用図書館」を開設するほか、生涯学習の“拠点”の設置に向けた検討も進めています。

こうした取組が評価され、大手金融機関が主催する専門家による住みたいまちランキングにおいて、大阪府・京都府・兵庫県の名立たる都市の中で、京阪沿線・北河内で唯一、寝屋川市駅が第8位に選ばれました。また、駅前の商業施設の売り上げが増加傾向となるとともに、大手飲食事業者が基幹店の出店準備を進めるなど、駅前の魅力と活力の向上につながる「ターミナル化構想」の成果の兆しが既に出始めています。

そして、今任期のミッションとして、新たに萱島駅周辺エリアのまちづくりをスタートいたします。都市計画道路の整備やイオンモール四條畷と隣接する高いポテンシャルを持つ南寝屋川公園の大幅リニューアルなど、新プロジェクトの始動に向け、既に検討を進めているところです。

このように、各駅周辺を起点として、新たなまちのプロデュースに向け、様々な取組を進めていることがお分かりいただけたと思います。この4年間で、従前からの香里園駅に加え、寝屋川公園駅、寝屋川市駅にも「日の光」が注ぎ始めつつあります。

さらに、子育て世代に「選ばれるまち」となるためには、何が必要かを考えてみたいと思います。

多くの人は、「住環境の良さ」が重要であると考えるかもしれません。確かに、「住環境」は住むまちを決める重要な要素です。

しかし、緑が多く、美しい景観を有するなど、本市より優れた住環境を持つまちは、数多く存在します。私は、「住環境」に匹敵する子育て世代に訴求力を持つ要素として「教育環境」があると考えており、大切な子どもが通う学校の教育内容や安心して学べる環境が充実していることは、住むまちの選択に大きな影響を与えると想定しています。

だからこそ、4年前の私の就任直後から、特徴を活かしたハード面のまちづくりの取組に加えて、「寝屋川だから学べる寝屋川教育の推進」や「市独自のいじめ対策」など、子育て世代への訴求力の高い施策を積極的に推進しているのです。

一見すると、一つ一つの取組は、異なった目的であるように思われるかもしれません。

しかし、全ての取組は、子育て世代から選ばれるまちとなるために、まちに『変化』を起こし、 「持続可能な競争優位」を生み出すことを目的として、“計画的かつ戦略的に”取組を進めてきたということを、御理解いただきたいと思います。

今後の市政運営の基本的方針

私は、就任以来、社会課題の本質を捉えた「寝屋川水準の施策」を立案することを基本姿勢として、取組を進めてまいりました。これは、先に申し上げたとおり、近隣市を上回るスピードで高齢化が進むことで、行政サービスが低下し、現在の公共施設を維持することができない、危機的な未来を回避するためには、「持続可能な競争優位」を早期に構築し、担税力のある子育て世代を誘引しなければならないとの信念に基づくものです。

行政に対する住民の評価は、これまでは、既存の住民サービスを改善して、住民満足度をどれだけ高めることができたのかを、その自治体の成果のみで評価する「絶対評価」が中心だったように思います。各自治体にとっては、わかりやすい時代だったのかも知れません。

しかし、SNSなどのソーシャルメディアが社会に浸透したタイミングと、どの自治体も経験したことのないコロナ禍を経る中で、各自治体がそれぞれ独自の施策を展開し始めたタイミングとが重なり、住民の評価は、他の自治体と比較して評価を行う「相対評価」に急速に変化しています。

今後、その傾向は更に強くなることが予測されます。各自治体で実施されるサービスの内容を、自治体間で比較をして、住むまちを選択する「相対評価の時代」に大きく転換したことを、行政は強く認識しなければなりません。

この「競争の時代」の中で、子育て世代の皆さんに本市を選んでもらうには、他の自治体と横並びではない、寝屋川市「ならでは」「だからこそ」の新たな価値を生み出していかなければなりません。そうした独自性によって「競争優位」を持たなければ、民間企業で言うところの「値下げ合戦」に、行政で言えばいわゆる「バラマキ合戦」に陥ってしまうことになりかねません。

寝屋川市は、「持続可能な競争優位」の構築を目指し、「寝屋川水準の施策」を推進することで、まちのイメージを刷新するような『変化』を起こしていかなければならないのです。

大きな変化を生み出すためには、「寝屋川市に住みたい」「寝屋川市で子育てをしたい」と選ばれるための、積極的かつ戦略的な「投資」が不可欠です。これは、建物や道路の整備などハード面だけではなく、人・モノ・情報などのソフト面を含めた事業展開を指します。また、新たな価値を創造することはもちろん、先進的で独創性が高く、社会の仕組みや課題の本質を捉えたものでなければなりません。なぜなら、既存事業の延長線上にある事業の改善を実施したとしても、他の自治体でも実施されるようになり、自治体間の競争優位を生むことにつながらないからです。

今、寝屋川市に求められるのは、未来のために必要な「投資」を戦略的に進め、「持続可能な競争優位」を築くことです。こうした考えの下、着実に取組を推進することで『変化』を確実なものとし、「選ばれるまち」の実現を図ってまいります。

「まちのイメージ」を変える

寝屋川市は都心部への交通利便性などを背景に発展してきました。時を経て、近隣市を上回るスピードで高齢化が進行する中、市内に分散して配置される公共施設へのアクセスの不便さや困難さが、今後、より顕在化することは避けることができません。公共施設の老朽化への対応を含め、まちの魅力や利便性をより高めるための「まちのリノベーション」が急務となっています。

令和3年に新しくオープンした中央図書館は、交通至便な寝屋川市駅前に整備し、加えて図書館のイメージを一新する落ち着いた空間を演出することで、子どもから社会人、シルバー世代まで多くの方が来館され、市内外から高い評価をいただくとともに、駅前のにぎわいや地域経済の好循環にもつながっています。

この事例で明らかなように、同じ規模の施設であっても、機能や配置等を工夫することで、新たな価値を市民に提供することができると考えています。まちの魅力を更に高める施策を加速することで、新たな「まちのイメージ」を創造してまいります。

まちのイメージを変え、本市が将来にわたって発展し続けるためには、学研都市軸と京阪軸が交互に成長する「2軸化構想」を実現しなければなりません。

学研都市軸においては、寝屋川公園駅周辺エリアを一つの「都市核」と位置付け、「子育て世代が暮らすまち」としてプロデュースするための取組を進めています。また、学研都市軸の訴求力を更に高めるために、本市域を含む星田駅周辺エリアを「新たな都市核」と位置付け、この「2つの都市核」を当該沿線軸の拠点としたまちづくりを進めてまいります。令和5年度中に開校する施設一体型小中一貫校をまちの「メインアイコン」に据え、寝屋川公園駅前広場のリニューアルや寝屋二丁目・寝屋川公園地区の土地区画整理事業の推進など、寝屋川公園駅周辺と星田駅周辺の「2つの都市核」の魅力を高めることで、このエリアへの子育て世代の誘引につなげてまいります。

他方、京阪軸においては、寝屋川市駅につながる都市計画道路対馬江大利線の整備を、また、香里園駅周辺は京阪本線連続立体交差事業の推進と高架下の効果的な活用の検討を進めてまいります。

特に、萱島駅周辺は、まちの魅力と活力を創出する大胆なまちのリノベーションが求められることから、都市計画道路萱島讃良線の整備と沿道の活性化に向けた検討のほか、駅前広場の整備や、子育て世代向けの「メインアイコン」となる南寝屋川公園のリニューアル、まちの雰囲気を活かした商店街のリノベーションと若者が集う新たな価値を創る事業者の誘致など、各事業を総合的かつ計画的に推進する「かやしまリノベーションプロジェクト」を始動します。当該地区の強みやポテンシャルを有効に活用し、そのポテンシャルの最大化につなげるよう、新たな「まちのコンセプト」を明確にしつつ『まちづくりの将来ビジョン』の策定を進め、多様な主体とまちづくりの方向性について共有し、協働することで、将来にわたり持続的に発展するまちの実現を図ってまいります。

本市の学校園を含む公共施設の多くが築50年を経過し、今後、一斉に更新時期を迎えることとなります。少子高齢化が進む中で、施設総量を将来にわたり維持していくことは困難です。これらの事態に対応するためには、「施設機能の集約化・複合化」をキーワードにダウンサイジングを進めていく必要があります。

しかし、これから本市が進める公共施設の再配置に当たり、ダウンサイジングによって市民サービスが低下しては、意味がありません。将来を見据えて、施設床面積のダウンサイジングを実施しつつも、これまで以上に市民サービス、市民満足度を向上させる施設更新を進めていく必要があります。こうした一見「二律背反」にも見える、極めて困難なミッションに取り組んでいかなければならないと考えています。

施設の複合化に伴い組み合わせる機能は、将来にわたる維持管理コストを検証するとともに、地域や施設にとってより最適なものを見いだす必要があります。今後、本市の公共施設の5割以上を占める学校施設の更新時期に合わせ、老朽化した他の施設を複合化することで、一つの建物を複数用途で活用し、効率化と利便性向上を同時に実現するための取組について、検討を進めてまいります。

公共交通の結節点である寝屋川市駅前に公共施設を集約化する「ターミナル化構想」の早期実現に向けては、市駅前に開設した中央図書館に加え、旧大阪電気通信大学駅前キャンパスを改修し、利用頻度の高い市民サービス機能を集約する「(仮称)駅前庁舎」を開設いたします。

また、子育て支援機能を併せ持つ「(仮称)こども専用図書館」を設置するとともに、地震の影響で使用できず、多くの市民が開設を待ち望む生涯学習拠点の設置に向けた検討を進めてまいります。

まちの変化は公共の建物だけにとどまりません。市内には、360箇所を超える大小の公園が点在していますが、全ての世代の利用を想定したことで、かえって多くの公園が使いにくいものとなっています。これまでの既成概念を取り払い、各公園に特徴を持たせることで、市民の満足度を高め、市民サービスの向上につなげる取組を進めてまいります。特に、イオンモール四條畷と隣接する南寝屋川公園は、子育て世代誘引の「メインアイコン」となる高いポテンシャルがあることから、萱島エリアのまちのリノベーションの検討と合わせ、公園の在り方について検討してまいります。

また、総合センター跡地やアドバンスねやがわ1号館屋上、香里園駅高架下などを候補地として、市域のバランスをとって、市民の皆さんの長年の願いであった小規模・多機能型のスポーツ拠点を計画的に整備してまいります。

「子育て・教育環境」を変える

私は、就任当初から一貫して「子どもに最善を尽くす」という強い信念の下、ディベート教育を始めとする寝屋川教育や市独自のいじめ対策など、子どもたちを守り育てる取組に重点を置いて市政運営を進めてまいりました。

寝屋川市だから学べる教育や子育て環境を充実することで、子どもたちの「未来を力強く生き抜く力」を育むことはもちろん、市外からの子育て世代の誘引を加速することにもつながるものと考えています。

国では、本年4月に子ども関連政策の司令塔となる「こども家庭庁」が発足しました。また、いわゆる「次元の異なる少子化対策」の方針が公表されています。児童手当の拡充を始め、学校給食無償化など様々な支援策が検討されていますが、財源確保の課題など、実施までには一定の時間を要することが想定されます。

本市の未来を担う全ての子どもたちが、健やかに成長できる環境を作るとともに、子育て家庭の経済的な負担と不安を減らし、子育て・教育で若い世代から選ばれるまちとなるために、国制度の構築を待たず「2つの無償化」を進めます。

一つ目は「保育料の無償化」です。国の幼児教育・保育の無償化から漏れ落ちていて、特に負担感の大きい第二子以降の保育料の無償化を実施してまいります。

二つ目は「学校給食の無償化」です。中学生の時期は、特に生活費や教育費の負担が大幅に増加することを考慮し、まずは、中学校給食の無償化を実施してまいります。

また、国制度のモデルとなった教育的・行政的・法的の3段階アプローチによる市独自のいじめ防止対策を更に充実・強化し、初期段階から見過ごさない、許さないという姿勢で、いじめゼロの教育環境を子どもたちに提供するとともに、より積極的に本市の取組を全国に情報発信し、自治体のスタンダードを作っていくことで、本市の競争優位性を一層高めてまいります。

近年、少子高齢化や情報化の進展などに伴い、子どもを取り巻く環境は大きく変化しています。今後、変化の流れはますます加速し、よりダイナミックに進展することでしょう。こうした先を見通すことが困難な時代にあっても、寝屋川市で学び、育つ子どもたちが、社会で力強く生き抜く力を養っていく必要があります。コロナ禍における学校教育活動の制限が解除されたことを踏まえ、ディベート教育など「考える力」を育む寝屋川教育をより実感していただけるよう、取組を加速してまいります。

また、子どもたちの将来にわたる学びの土台を作るためには、小学校入学前の幼児期の教育・保育が極めて重要であると考えています。本年3月に策定した「就学前教育・保育プログラム」に基づき、幼児期から「伝える力」や「聞く力」を育てる対話を重視した教育環境を構築するなど、就学前から小・中学校の15年間一貫した寝屋川教育を推進してまいります。

その他、要望の多い小中学校トイレの洋式化を計画的に進めるとともに、全小中学校に温かくておいしい給食を提供するため、小中学校親子給食調理場の建設を進めるなど、拡大親子方式による提供体制を早期に構築してまいります。

「暮らしの質」を変える

各地で繰り返し発生する地震や水害などの大規模自然災害、そして近年のコロナ禍の経験を経る中で、安全・安心の確保は、人々が生活を営む上で最も基礎となるものであり、行政に課せられた最重要の使命であると、改めて認識させられました。

「災害は必ず起こる」ことを念頭に、行政は市民の命を守るために、事前にどのような取組を進めておかなければならないか、そして市民一人一人や地域では、どのような準備・取組が必要か、「公助」と「自助・共助」の仕組みを分けて、明日、災害が起きても市民の皆さんに生き延びてもらうための「リアルな災害対策」を進めていかなければならないと考えています。

近い将来、高い確率で大規模地震の発生が予測されています。本市では、中学校体育館にプロパンガス活用型のエアコンを全国に先駆けて設置し、長時間電源を喪失してもエアコンや照明などを使用できる環境整備を進めています。更なる災害対策を図るため、小学校体育館へのエアコン設置を進めるとともに、非常用発電装置の配備など、災害時の強靭性向上に資する取組を進めてまいります。

また、密集市街地の解消に向けた老朽木造家屋等の建て替え促進や狭あい道路の整備のほか、浸水対策として古川雨水幹線バイパス管工事の令和7年度完成に向けた取組など、災害に強い都市インフラの整備を計画的かつ着実に進めてまいります。

今後も高齢化が更に進行することは、避けることができない事実です。シルバー世代の皆さんが、住み慣れた家・地域で、最後まで暮らし続けることができるまちを創っていかなければなりません。

誰もが地域の中で、充実した生活を送ることができるよう、介護支援や相談支援など、地域全体で支え合う社会の構築に向けた取組を推進してまいります。

高齢化の進行に伴い、自動車の運転に不安を感じ、自主的に運転免許証を返納する方や、転倒・事故を防ぐために自転車の利用を控える方の増加が想定されます。これらの方々が、安心して日常生活を継続できるよう、買物や通院などへの移動手段を確保し、交通利便性の向上と外出による健康を維持できる環境を構築する必要があります。

こうした状況を見据え、シルバー世代の外出時の移動に係るニーズを把握するとともに、公共交通不便地域における移動手段やバス利用促進事業など、シルバー世代等の交通インフラの確保に向けた検討を進めてまいります。

また、公共施設の配置を見直すことで、シルバー世代等が来庁しやすい環境を構築いたします。

公共交通の結節点である寝屋川市駅前に公共施設を集約化する「ターミナル化構想」を実現することで、シルバー世代等がバスなどの公共交通機関を利用して、容易に公共サービスにアクセスしていただくことが可能となります。

他方、現在の市役所本庁舎1階部分には、福祉部局を配置することで、シルバー世代や障害をお持ちの方などが送迎時に車両で来庁でき、駐車場から手続まで“フラットな環境”でサービスを受けていただける環境を整備してまいります。

誰もが安全で安心して暮らせるまちの基盤となるのは、住民同士のつながり、つまり地域の絆であると考えています。「地域を守ることは、市民一人一人を守ることである」との認識の下、地域協働協議会を始めとした地域組織の支援を充実するとともに、自治会役員等の負担軽減策の実施のほか、自治体として地域コミュニティの組織や役割の重要さを明確にし、これまでの常識にとらわれない地域コミュニティ振興のための新たな仕組み作りを進めてまいります。

また、施設一体型小中一貫校の開校に合わせ、学校内に、市民の学習と子育ての支援を図るとともに市民相互の交流を推進する地域交流スペースを設置し、新たなコミュニティ活動の拠点として、地域の更なる魅力の創出につなげてまいります。

「市役所のサービス」を変える

「選ばれるまち」の実現に向け、私たち行政は、市民の皆さんから「評価される市役所」を目指していかなければなりません。私は常々、市民との関係のあらゆる場面で、市民の側に「行政の都合」のしわ寄せを押し付けることはあってはならないと考えています。こうした考えの下、“市民の事情>(大なり)行政の都合”を行動指針とする 「市民サービス改革」の取組を本格的に進め、市民の声をしっかりと聴き、ニーズを的確に捉え、「市民の心を動かす」サービスを提供してまいります。

特に、「(仮称)駅前庁舎」においては、従来のフロアー配置や窓口の在り方にとらわれることなく、市民を「待たせない」「動かさない」をコンセプトに、市民目線のサービスを提供してまいります。

まず、市民を「待たせない」です。行政の手続は、引越しのシーズンや税・保険の申請時期など季節により窓口の対応数が大きく変動します。特定の手続の申請が多い時期には、他の手続を行う窓口を、混雑が予測される窓口へと転換するなど、季節ごとに変動する混雑状況に合わせて、窓口数や内容を柔軟に変更する「可変型窓口」の導入を進め、効率的でスピーディーな市民対応を実現してまいります。

もう一つは、市民を「動かさない」です。現在、手続を行う窓口や担当部署が複数の施設に分散しているため、市民の皆さんに施設間を移動していただく必要がありますが、利用頻度が高く、利用者が多い窓口や機能を寝屋川市駅前に集約化することで、施設間の移動を最小限に抑えることが可能となります。加えて、これまで、手続や相談内容によっては、担当部署が異なるため、同じ施設内でも窓口間を移動していただくことがありましたが、離れた部署をオンラインで結び、手続や相談業務が行える3者同時コミュニケーションツールの活用等によって、手続などが複数あっても移動することがないワンストップの行政サービスを進めてまいります。

さらに、自宅・外出先から窓口の来庁状況を確認できるシステムの導入など、デジタル技術の活用によって「待たせない」「動かさない」サービスを一層加速させ、これからの時代にふさわしい市役所の新たなスタンダードを創ってまいります。

人手不足が深刻化し、若年層の離職率増加が社会問題となっています。行政であっても、人材獲得競争が激化する中で、これまでのように優秀な人材を確保するためには、「人材確保における競争優位」を生み出す必要があります。

近年、北河内の近隣市を含む多くの自治体では、本庁舎の建て替えの検討が進められていますが、本市では市民の将来負担等を考慮して、本庁舎の建て替えを行いません。

働く側から見れば、新しい庁舎を魅力的だと感じる人もいるかもしれません。だからこそ、他の自治体よりも、フレックスタイム制を始めとする市独自の働き方改革を進め、これまで「どの自治体でも実現したことのない」自由かつ柔軟な働き方を実現し、優秀な人材に「ここで働きたい」「チャレンジしてみたい」と思ってもらえる「働き方の競争優位」を高めていく必要があると考えています。

そのため、私の就任間もない時期に、職員自らがライフスタイルに合わせた働き方ができるフレックスタイム制や家庭事情などで一度退職した職員が“復職”できる再チャレンジ制度を導入しました。その結果、制度を導入した令和元年10月の職員採用試験では、例年の10倍を超える方が、本市を選び、応募されています。また、令和2年度からは「働き方改革推進プラン」を策定し、業務の断捨離や人員増の取組などを推進することで、職員のワーク・ライフ・バランスの実現と生産性の向上を図ってまいりました。

本市の至上命題である子育て世代の誘引による人口のリバランスの実現には、職員がその能力を最大限に発揮し、社会課題の本質を捉えた「寝屋川水準の施策」を創造し、実行していかなくてはなりません。そのためにも、コロナ禍の臨時業務が落ち着いた今、いよいよ本格的に、自由かつ柔軟な働き方を実現するための働き方改革を全職員一丸となって推進してまいります。

行政情報を市民に届ける「メディア」は、広報誌やホームページ、SNSなどにとどまりません。

これまで、サードプレイスをコンセプトとした中央図書館の開設や、市民に寄り添い満足度の高いサービスを提供する窓口専門職員の配置、ランタンの明かりで幻想的な大人の空間を演出するお月見イベントの実施など、様々な取組を実施してまいりました。これらの施策の共通点は、市民の皆さんと行政の間の「接点」であるということです。私は、こうした施策は、寝屋川市の『変化』を市民の皆さんに実感していただくための「メディア」であると考えています。このような「メディア」としての効果を念頭に、これまでも戦略的に政策立案・施設整備を実施することで、「寝屋川市が変わってきた」ことをメッセージとして伝えてきたのです。

各自治体で実施されるサービスの内容を自治体間で比較し、住むまちを選択する「相対評価の時代」にあっては、発信される情報が施策効果に大きな影響を与えます。

これらのことを踏まえ、今後の4年間においても、引き続き「メディアとしての政策」「メディアとしての公共施設」を意識した、政策立案及び施設整備に努めてまいります。

また、本来の媒体である市広報誌の内容を不断に見直すとともに、『変化』の実感を広く拡散していくため、幅広い世代に訴求力を持つ動画コンテンツの強化を図ってまいります。

今後の市財政は、人口減少や高齢化の進行、公共施設老朽化への対応など、一層厳しさを増すことが想定されます。

こうした中で、本市に子育て世代を誘引するためには、「持続可能な競争優位」を生み出す積極的な「投資」が必要であり、その取組を支える「新たな財政の仕組み」が不可欠です。

これを踏まえ、新年度予算編成において、新たに「マイナスシーリング型予算」を導入します。これは、例えば、第二子以降の保育料の無償化や中学校給食の無償化など、積極的な「投資」を行うための財政上の方策であり、扶助費など市民生活を支えるために必要となる経費を除く予算について、部局別の予算から一定比率を縮減し、「投資」に充当する財源を生み出すための手法です。

加えて、優先度の高い事業への予算の重点配分を行うため、長年の事業実施によって成果・効果が薄れている施策の見直しや費用対効果の視点で経費のムダを積極的に排除する「ネヤガワ式予算スケール」を用いた予算編成を引き続き実施し、それらの相乗効果により、集中と選択をより意識した予算としてまいります。

こうした、既存予算の精査から生み出す財源とこれまで積み立ててきた基金を積極的に活用するなど、将来に向けた「投資」を戦略的に進めるためのメリハリの効いた行財政運営を進めてまいります。

結びに

私はまちづくりをよく「囲碁」に例えます。整備予定の公共施設などは「碁石」です。「アイコン」(象徴)となる「こだわり」の施設を的確に戦略的に配置していくことで、一つの石の「点」が、次第に結びつき「面」を形成していきます。まちづくりではこれが「まちの印象・イメージ」となります。

大規模な再開発ができない本市が、「短期間」でまちのイメージを変えていくには、いくつかの「点」(施設)で「面」(イメージ)を形成していくこの手法が最も有効です。また、その効果を最大化するためには、通常の「点」(施設)ではなく、経営資源を集中させた「こだわりの一点」、メッセージ性の強い、新たな価値を提案する「こだわりの施設」が必要です。キーワードは「こだわりのまちづくり」です。

シビルミニマムも時代とともに大きく変わりつつあります。図書館、学校、公園、市役所、これまでシビルミニマムを満たしていた施設の仕様では市民満足が得られない時代が来ています。我々は寝屋川市のリノベーションを進めるに当たって、「新たなシビルミニマム」をどう設定するのかを戦略的に決定していかなければなりません。これは施設に限らず、子育て支援などソフト面の施策でも同様です。その新たな基準に基づいた「こだわりの施設」「こだわりの政策」が寝屋川市の競争優位となり、選ばれるまちへとつながるのです。

最後に、これらを実現していくためには、これまで以上に「経営責任」を明確にしていく必要があります。そこで、市長を始めとする経営陣、つまり特別職の給料に「市民評価連動型給料」を導入します。これは定点観測として4年ごとに実施予定の(仮称)市民意識調査の市政運営への評価の項目を指標として、「評価しない」が「評価する」を上回る率を、改善すべき“経営上のペナルティー”として、定められた給料から減額するものです。

私は今回の選挙を通して、市長の仕事は「4年間のプロ契約」のようなものだと市民の皆さんに訴えてきました。プロとして市民から税金で雇われた以上、4年間の成果をしっかりお示しすること、そしてそれに対する市民の皆さんの評価と新たな契約の金額が連動する仕組みが必要です。

何より、それら「すべての過程」を市民の皆さんに公開することで、市民の皆さんの「納得感」につながるものと考えます。これは「経営責任」を明確にし、その責任を負うという我々特別職の「覚悟」を示すものです。

この4年間も引き続き、寝屋川市が「選ばれるまち」へと大きな変化を遂げるために、スピード感を持って、市政運営に全力を傾注し、市民の皆さんから課せられた私の職責を果たしてまいります。市民の皆さん、議員各位にはどうか御理解をいただき、御協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

用語説明

まちのリノベーション

既存の不動産を再生させ、新しい機能や価値を付与することで、まちの魅力の向上、地域の活性化につなげる取組のことをいいます。

ダウンサイジング

コストダウンや効率化のために規模を縮小することをいいます。

シビルミニマム

教育・福祉・衛生・住宅・交通機関など、地方公共団体が住民の生活のために保障しなければならないとされる、最低限度の生活環境基準のことをいいます。

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更新日:2023年06月20日