令和6年7月号 京都花街の町並み再生 先斗町まちづくり協議会事務局長 神戸啓さん

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神戸さん

先斗町で

先斗町まちづくり協議会事務局長 神戸 啓さん

「先進地と比べ周回遅れの状態でした」と振り返る神戸啓さん。かつて、料理店などが軒を連ねる狭い通りにはみ出した看板が景観を損ねていた京都・先斗町(ぽんとちょう)の再生に奔走し、300年来の町並みや風情を取り戻しました。

京阪電車の祇園四条駅から徒歩3分。鴨川を渡ると右手に「先斗町」と刻まれた石碑が見えてきます。南北約500m、幅2m足らずの通りや路地に約350軒がひしめく花街の木造町家に移り住み、和雑貨店を開いたのは29歳のときです。

花街の風情失われ まちづくりの最前線に

当時、町並みを保全する取り組みは全く行われていませんでした。無造作に並ぶ看板に加え、景気の落ち込みで客足も遠のき、「先斗町らしさが次第に失われていきました」。そんなときでした。「男性が少ないから」と町内会の役員に推され、翌年には自治連合会の常任理事に。「イヤイヤ引き受けました」が、35歳で先斗町まちづくり協議会の副会長を兼ねた事務局長に任命され、気が付けば課題が山積するまちづくりの最前線に立っていました。

「嫌なことからやろう」 条例より厳しいルールで規制

まず町の自主ルール「町式目(ちょうしきもく)」を作り、路上喫煙の禁止と屋外看板の規制に取り組みました。同じ頃、屋外広告物条例の強化を目玉にした京都市の新景観政策がスタート。「先斗町の看板は98%が条例違反の状態でした」。そこで、屋外看板は路上にはみ出さないなど条例より厳しい項目を町式目に追加。「嫌なことからやろう」とメンバーの意識改革を図る一方、自らも通りの汚れた石畳や壁をブラシや雑巾で黙々と磨いて店主や女将との信頼関係を築き、1年かけて条例違反の状態を解消しました。

すっきりした町並みを取り戻し、 観光客でにぎわう先斗町通

すっきりした街並みを取り戻し、観光客でにぎわう先斗町通

「防災で景観守ろう」80か所の水柱で初期消火

年前の7月、景観を脅かす火事が起きました。消防車が入れない木造町家の密集地で飲食店から出火し延焼。「建て替えるときに通りの拡幅が求められるなど町並みが変わる恐れもあり、防火の大切さを痛感しました」。このため、消防や警察と連携し「このまち守り隊」を結成。通りの散水などに使う約80か所の水栓を初期消火に利用できるようにするなど、景観保全と防災が一体となった活動が認められて昨年9月、防災功労者の内閣総理大臣表彰を受けました。

新たな"空間まちづくり"提唱 「次は鴨川のライトアップを」

周回遅れから15年。魚と水と光がある"空間まちづくり"を提唱し、店の横でメダカや金魚の水槽が並ぶ路地水族館には、外国人観光客たちがカメラを向けています。  大学や学会などから講演依頼も相次ぎ、トップランナーを自負する神戸さんの次の取り組みは、15キロメートルに渡って鴨川をライトアップするプロジェクト。昨年から実証実験も始まり、トレードマークのねじり鉢巻きで新たなまちづくりに挑戦しています。

私とふるさと

寝屋川市役所の近くにあった幼稚園に枚方市から電車で通いました。昼過ぎにいったん帰宅し、夕方に同じ幼稚園で開かれた絵画教室へ。絵が好きになり、大人になったらカーデザイナーになろうと思いました。

中学校を卒業すると、寝屋川高校に入学。中学生から始めたゴルフに夢中になり、体力づくりのために陸上部の朝練習に参加し、昼は野球部員とキャッチボールをしていました。授業やイベントも楽しい3年間でした。

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更新日:2024年06月25日