令和5年4月号 伝統の技受け継ぎ「柳行李のよさもっと伝えたい」工芸士 加藤かなるさん(28歳)
ヤナギと麻糸で編む柳行李
網目模様が美しい
開業準備から手掛けた伝統工芸館「杞柳」
丈夫で軽く、通気性に優れた柳行李(やなぎごうり)の一大産地だった兵庫県豊岡市。1300年の伝統技法を受け継ぐ師匠の元で修行する寝屋川市出身の加藤かなるさんは今秋、師匠に続く2人目の伝統工芸士を目指して独り立ちします。
そばが名物の同市出石町にある伝統工芸館「杞柳(きりゅう)」。店内に入ると、ヤナギの仲間のコリヤナギを使って豊岡杞柳細工の代表的な工芸品の柳行李を編む加藤さんの姿がありました。
海外で見直した日本らしさ 旅先で柳行李と出会う
伝統工芸に興味を持ったのは7年間暮らしたヨーロッパでした。海外経験が豊富な両親に触発され、18歳で単身ドイツへ。「向こうの友人らに尋ねられて逆に日本らしさを知り、日本の伝統文化を見直しました」と話し、帰国した25歳のときに旅行先の豊岡市で柳行李と出会いました。
「泊まったゲストハウスからたくさんの出会いが生まれ、面白そうな街だなと。地域おこし協力隊員として伝統の技を継承する職人の募集を知り、応募したのがきっかけでした」。
厳しさ半端ない世界へ 師匠から熟練の技学ぶ
柳行李を編む工程は機織りに似ています。作業台に皮を剥いだコリヤナギを並べて板で押さえ、指で1本ずつ上下に分けた間に麻糸を通します。弟子入りした柳行李でただ一人の伝統工芸士・寺内卓己さんは「私の修行時代はなかなか編ませてもらえませんでした」と話しますが、それでも熟練の技を惜しみなく伝えてきました。
加藤さんも「中途半端な気持ちではできません」と厳しい職人の世界を自覚。「ヤナギのしなやかさや硬さは1本1本違い、指の感覚を頼りに編むのが難しい」といいます。体をかがめて一日中編むのは体力も根気もいる作業ですが、「100年でも使える伝統の技を継承する立場としてやりがいのある仕事です」。
一人前の工芸士目指し独立へ「生計立てられる仕事に」
協力隊としての活動は今年9月で終わり、年内の独立を目指しています。すでに地元商工会の会員として活動し、工房の候補となる古民家を探すなど着々と準備。全盛期は分業化されていた作業もほとんど一人で行わなければならず、コリヤナギの栽培も勉強してきました。
寺内さんは「過酷な作業を真面目に取り組んできました。覚えることはまだたくさんあり、一人前の職人を目指してほしい」と期待。加藤さんは「もっと若い人に柳行李のよさを知ってもらう工夫をし、職人として生計を立てられるよう頑張りたい」と意気込みます。
私とふるさと
市立啓明小学校、第九中学校に通っていたときに地元のクラブでサッカーをやっていました。中学校に入ったころから面白くなり、淀川の河川敷に出かけて練習。学校の部活ではなかったのですが、ほかの中学校のグラウンドでもよく試合をし、進学した京都の高校でも続けました。
ドイツのフランクフルトに行く18歳まで高柳の実家に住んでいました。よく田舎でもなく都会でもないと言われますが、自然も残っており、生まれ育った寝屋川市は僕にとって特別感のある街です。
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更新日:2023年03月27日