令和4年8月号 草原のシルクロードに魅かれてモンゴル帝国の英雄に迫る 龍谷大学農学部准教授 中田裕子さん(46歳)
GPS(全地球測位システム)を頼りに四輪駆動車で大草原を移動。ときには小さなテントに寝泊まりしながら続けてきた調査が、約800年前にモンゴル帝国を築いた遊牧民の英雄チンギス・ハンのイメージを変える発見につながりました。
小さい頃から西域に興味 大学院でモンゴル調査へ
専門は東西交渉史。中央アジアを経由して中国とローマを結ぶシルクロードも研究テーマの一つです。
2、3歳の頃は孫悟空が登場する『西遊記』のテレビドラマに夢中になり、高校生のときは井上靖の『敦煌(とんこう)』などの歴史小説を好んで読みました。舞台はいずれも中央アジアなど西域(さいいき)と言われる地域。「子どものときから興味があったようで、高校の授業でシルクロードを旅した商人の活躍を知り、勉強したいテーマが見つかりました」。
龍谷大学で中央アジアを研究する教授と出会い、歴史学者の道へ。大学院生だった平成16年にモンゴルとの合同調査に初めて参加し、広大な地域を遊牧民が支配していたことに驚いたといいます。
13世紀の遺跡から仏像出土 英雄のイメージ変える大発見
このときの調査地は首都ウランバートルから880キロメートルも離れた遺跡でした。3つのルートがあるシルクロードの中で北側をたどる「草原のシルクロード」の交通の要衝にあり、大帝国を率いたチンギス・ハンの軍事拠点だったことが判明。中田さんが主導した12年後の調査で仏像の手と足が見つかりました。
「当時の遊牧民は仏教を信仰しておらず、中国から連れて来られた仏教徒のために作ったのでしょう。野蛮な破壊者とのイメージがあるチンギス・ハンですが、実は宗教など多様な文化に寛容だったのではないか」と分析し、歴史的な発見として注目を集めました。
研究を支える現地調査 大草原を車で移動
これまでの研究で大切にしてきたのは、現場に足を運ぶフィールドワークです。今年5月にもモンゴルを訪れ、文字が刻まれた唐時代の石碑を調査。景観や気候を肌で感じると資料に書かれた内容が浮かび上がってくるといい、四輪駆動車で何時間もかけて現地に向かいます。
標高1000m以上の高原が続くモンゴルで比較的温暖な夏に調査。テントで野営することもあり、「一日の寒暖差が大きく、氷点下まで下がった夜は寒くて眠れませんでした」。
変わらない遊牧民のエコ生活 「寛容性と多様性を学んで」
遊牧民の生活様式は大帝国の時代から大きく変わっていないといいます。ヒツジやヤギを飼い、「ゲル」と呼ばれる移動式の住居と一緒に草原を移動。「家畜の乳は飲料になり、内臓などもソーセージのように腸に詰めて食べます。フンも燃料に。地球環境にいいエコな暮らしをしています」。
そして「私たちの生活は技術的には進んでいますが、寛容性や多様性の大切さを今回の発見や歴史から学んでほしい」と話します。
私とふるさと
両親の話では、父親の仕事の関係で引っ越した寝屋川市で生まれ、3歳まで住んでいました。
自宅は高柳にあり、近所の友だちといつも遊んでいました。温かな下町の雰囲気の中で伸び伸びと育ったといい、両親にとっても幸せな思い出が詰まった街のようです。
市内には渡来人としていろいろな技術を日本にもたらした秦河勝のものと伝わるお墓があります。シルクロードを研究するうえでも重要な人物の一人で、これも何かの縁ですね。
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更新日:2022年07月26日