平成30年1月号 立教大学名誉教授 上田 恵介さん

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タイル張りの建物を背に笑顔で写っている上田さんの写真
山を見上げている上田さんの写真

「鳥や虫を見ながら通学して。のどかやったなあ」

平成28年、「山階芳麿賞」を受賞した立教大学名誉教授 上田 恵介さん

 山階芳麿賞(やましなよしまろしょう)は、公益財団法人「山階鳥類研究所」(千葉県)が功績を認めて隔年で贈る、日本の鳥の研究の分野で最も重要な賞です。受賞者の上田恵介さん(67歳)=埼玉県鳩山町=は、寝屋川市で育ったそうです。帰省の折に取材に応じていただきました。
 5歳で枚方市から転入し、豊野保育園、市立東小学校、第一中学校、府立寝屋川高校に通いました。「小学生の頃、20分程の通学は田んぼや畑のあぜ道を通っていました。毎日、鳥や虫を見たり、かえるを捕ったりして飽きなかった。校歌も、五藤ヶ池に浮くかいつぶり、空に輪を描くとびが登場してバードウォッチングみたいでねぇ」。自然豊かだった頃の市内の模様が目に浮かびます。
 小学生の頃、既に研究者になる片りんが現れていました。図書館に通い詰めて鳥類図鑑を色鉛筆でノートに写した「自分図鑑」を作り、6年生の夏休みの自由研究では市内の山に営巣した、たかの仲間・さしばの観察に取り組みました。クラスでは「鳥博士」と呼ばれ、担任教諭の指示でみんなの前で鳥について<授業>したとか――。
 専門は行動生態学。難しそうですが、例えば大阪市立大学大学院で博士論文のテーマに選んだのは、鳥には珍しい一夫多妻制のせっか(雪加)でした。すずめほどの小鳥で、雄が縄張りの中に複数の巣を作って次々と雌を誘い、交尾後ひなが生まれたら世話は雌任せ。人間からは何だか危うく思えるこの繁殖システムについて、4年間、和泉市の丘陵地に通ってその仕組みの一端を解明しました。
 立教大学では、かっこう類が他種の鳥の巣に卵を産みつける「托卵」や、目白などが花粉の媒介をせずに蜜を吸ってしまう「盗蜜」を研究し、多くの種が関わり合って生物の行動が互いに変化する「共進化」のダイナミックな姿を示しました。
 今、心配しているのは東日本大震災で起きた原子力発電所事故による、野鳥への影響です。野外に放出された放射性物質は今後も長期間、少しずつ放射線を出します。生物がどんな被害を被るか予測できないとして、調査を続けています。

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更新日:2021年07月01日