平成29年8月号 右手だけで弾くピアニスト 樋上 眞生さん

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グランドピアノに右手を添えている樋上さんの写真
スーツを着て笑顔で写っている樋上さんの写真

「音楽の盛んな街に」 右手だけで弾くピアニスト 樋上 眞生さん

 樋上眞生さん(33歳)=豊野町=は、世界でもまれな右手のピアニストの道を歩んでいます。演奏中、左手の指が思うように動かなくなるジストニアという、演奏家生命にかかわる症状が契機でした。右手だけで弾くようになり、一度に鳴らす音が少なくなったことでシンプルに音楽に相対するという新たな可能性も感じ、「ハンディとは思っていません」と語ります。
 京都市立芸術大学を卒業し、オーストリア留学などを経て、数々のコンクールやリサイタルで活躍していた平成26年春。日本人として初めてロシアの作曲家、リャプノフの作品をCD収録するため練習を重ねていたとき、左手の人差し指に症状が出始めました。さらに根を詰めて練習し、録音を乗り切りましたが、症状が悪化しました。複数の医療機関でいろいろな診断を受け、ジストニアと確定するまで半年掛かりました。
 ジストニアは神経系統の働きに異状が起き、本人の意思に反して体が動く症状です。音楽家の場合、不断の反復練習が原因になるといわれ、確実に治る治療法はまだ見つかっていないのが現状です。
 樋上さんにとっても、たゆみない練習は欠かせないものでした。左人差し指を使わない9本指の演奏を試みたものの、元のように自在には弾けません。複数の治療を試みながら悩んだ果てに約1年後、ジストニアと向き合い、右手のピアニストとして生きる決意をしました。
 ただ、クラシックの世界では左手のピアニストとして活躍している人は数多く、左手の名曲もあるのに、なぜか右手の演奏家は知られていません。選んだ道は先人の見当たらないものでした。
 樋上さんによると、左手の曲を右手で演奏することは可能ですが、自分が表現したい曲ばかりではありません。演奏時、右足でペダルの操作をするため、バランスが右に偏って体力の消耗も激しいといいます。
 それでも、「ピアニストをやっていく以外、考えられませんでした」と振り返ります。昨年12月、右手のピアニストとして初のリサイタルを東京で開催するなど各地での演奏会に加え、ロシアのラフマニノフの作品など自分のスタイルに合ったピアノ曲を右手向けに編曲する活動を続けています。まだレパートリーは十分ではないといい、全て自ら編曲した右手曲で構成したリサイタルを開くのが目標です。
 「生まれも育ちも寝屋川。この街が大好き」という樋上さん。音響が工夫された市のアルカスホールが平成23年に開館した際、記念行事で演奏を披露したこともあります。「音楽の盛んな街として発展してほしい」と願っています。

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更新日:2021年07月01日