豆腐屋さんと池の主(ぬし)

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鳥居の奥に社殿が映っている太間天満宮の写真

このお話はいつ頃からか、太間の村に伝えられているお話です…。
木屋(こや)村と太間(たいま)村との間には用排水のための、大きな建物と水路があります。このあたりは、昔大きな池のあった所で、大変低い土地でした。
昔、木屋村の方から太間村の方へ、そして次々と村をまわって豆腐を売りあるく豆腐屋さんがありました。
朝早く起きて、寒かろうが、暑かろうが、豆腐を作って、夜の明ける頃には荷を担(にな)って家を出ました。
その日は寒い朝でした。豆腐屋さんは淀川から吹いてくる冷たい風に頬をまっ赤にして池の側を通りました。
池の側には一本の大きな榛(はん)の木がありました。豆腐屋さんは急いで来たので身体がほかほかしてきました。それにすこし疲れたので、木の根方に腰をおろして休みました。
その時、池のまん中の方で何かが跳ねる大きな水音がしました。
何事だろうと豆腐屋さんが振り向くと、大きな渦がでてきていました。
鯉でも跳ねたのだろうと思って豆腐屋さんは豆腐の滓(かす-おから)を荷から取り出すと、球にして渦の所へ投げました。すると大きな渦がわきおこったかと思うと、おからは水中へ吸い込まれてしまいました。
さあ出発しようと、豆腐屋さんは荷を担って歩き始めました。
その日は不思議なほど豆腐がよく売れました。いつも残るおからまでが、すっかり売れてしまいました。
それで翌日、豆腐屋さんはいつもより多く作って出発しましたが、この日もすっかり売り切れてしまいました。勿論(もちろん)、榛の木の側で、池へおからを投げました。すると昨日の様に渦を巻いて、大きな音をたてて吸いこまれていきました。
それからは、それが毎日の行事のようになりました。
豆腐屋さんは商売繁昌(しょうばいはんじょう)で、ほくほくしていました。
そんなある日、特別の用事があって、いつも通る道ではなく、逆の道をとりました。すると不思議なことに、いつも買ってくれる家までがすこしも買ってくれません。それで足を伸ばして遠くまで売りに廻りましたが売れませんでした。重い売り残りの豆腐を担って帰りました。
あくる日は以前のように、池のそばで休むと大きな音をたてて渦がまき起こりました。おからを投げると、たちまち吸いこまれていきました。
道を変えた日は、すこしも売れません。
豆腐屋さんは、はじめて気がつきました。
池には主(ぬし) が棲(す)んでいる、主に施行(せぎょう)した日はよく売れるのだと。
そんなことに気づいてからは、どんなことがあっても、池の主におからを施行することを忘れませんでした。
池の主は何だったのでしょう。
それは誰にもわかりません。
ただ、そんな話が残っているだけです。

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更新日:2021年07月01日