高い所へ移りたい!木田村の住吉さん

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鳥居のある住吉神社を歩く人たちの写真

昨日も雨でした。
今日も降りつづいています。
あたりの稲田は、だんだんと水に浸かってきました。
まだ十分に伸びていない稲は、水の中に沈んでしまいそうです。
「こんなに雨が降り続いたら、今年は米がとれないかもしれない。」
村人が集まって、心配そうに話し合うようになりました。
雨は降り続きます。
水かさが、ますます増えてきました。
家の土間まで水が入ってくるようになりました。
「こんな長雨は、生まれてこの方、一度もなかった。」
最年長のおじいさんも、ため息まじりに、つぶやくのでした。
その夜のことでした。
おじいさんは、なかなか眠れませんでした。それでも、夜の明け方になって、うとうとしていると、白い装束をつけた神様が夢に現れました。そして、「わしは住吉明神である。お社が水に浸かって困っている。高い所へ移りたい。たとえ糠(ぬか)団子を食べてでもいい。水に浸からない所へ移りたい。」そういうと、神様の姿は、すーっと消えていきました。
それで目がさめました。
おじいさんの頭の中には、今しがた夢の中で聞いた言葉が、はっきりと焼きついていました。
おじいさんはとび起きると、家の外へとんで出ました。
戸口まで、水がひたひたと押し寄せています。
お宮の方を見ると、稲田が沈んで、一面に水があふれ、池のようになっています。その中にお宮のお社が、島のように、ぽつんと浮いて見えます。
おじいさんは、裾(すそ)をはしょると、水に沈んだ道を、お宮の方へ歩きはじめました。
お社の床下まで水が流れこんでいます。
神様のお告げの通りです。
そこへ、隣の人もかけつけて来ました。
2人・3人と約束でもしたように、村人が集まってきました。
そして口々に、お宮さまが水に浸かってしまったので、高い所へ移りたい、たとえ糠団子でも辛抱するからと、おっしゃった夢を見たというのです。
不思議なこともあるものだと、人々は思いました。
これほどたくさんの者が、同じ時に、同じ夢を見たからには、神様がほんとうにお困りになっていらっしゃるに違いないと思いました。
どこへお移ししようか。
人々はあたりを見わたしました。
すると北の方に、一本の大きな木の生えている所が目につきました。
「そうだ、あそこなら、水に浸かる心配がない。」
人々は思いました。
その場所は他の土地に比べてすこし高くなっているので、今まで一度も水に浸かったことがないのです。
人々は水に浸かりながら、その木の所へ歩いてきました。

やがて雨が降り止んで、水は少しずつ減りはじめました。
浸かっていた稲も葉先が見えはじめました。けれど、伸びた稲の葉は、水が減るとともに、だらりと、しなだれてしまいました。
水が意外に早くひいたので、稲は全滅を免れましたが、ものすごい減収でした。

その年の秋、村人たちは協力して、お宮のお社を、一本の大きな木のそばに移しました。そして、お米が不作であったせいもあって、お宮さまには、夢のお告げのとおり、米糠でつくった団子をお供えしました。
神様に糠団子を供えて、氏子がお米団子を食べるわけにはまいりません。同じように食べようとしましたが、まずくて食べることができません。捨てることもできないので、牛に食べさせてやると、牛は大よろこびで食べました。
やがて糠団子は米団子にかわりました。けれど糠団子を牛に食べさせる習慣は長く続いたと申します。
このお宮さまが、寝屋川市駅のそばの住吉神社なのです。そして、もとお宮さまのあった所には、現在小さな「元宮さま」の祠があって、お祀りしてあります。そのあたり一帯を、この故事にちなんで「木田元宮」と呼んでいます。地域の自治会館は、元宮さまのそばに建てられています。

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更新日:2021年07月01日