大きなひょうたん

ページID: 10842
カエルと大きなヘビがお互いを見ているイラスト

むかしむかし、五作じいさんが田んぼの見まわりをしていました。
田んぼは黄色の稲穂が波打っています。
今年は、豊年まちがいなし。
そう思うと、心の底から、うきうきしてきます。
五作じいさんは上機嫌で野川のほとりを次の田んぼへと歩いていきました。
その時ふと大きなヘビがカエルをねらっているのに気がつきました。
カエルはまだ気がついていません。
いや、恐ろしさに動けないでいるのかもわかりません。
「かわいそうに」と五作じいさんは思いました。
それで思わず、「ヘビさんよ。そんな小さなカエルを食べたって、おなかがくちく(いっぱいに)ならないだろう。助けてやれよ。」とつぶやきました。
するとヘビは、くるりと五作じいさんの方へ向きなおって、赤い舌をペロペロ出して、じっと見つめました。
五作じいさんは気持ち悪くなりました。背すじがぞくぞくしてきました。恐ろしくなりました。
「あなたの大切なものがほしいんです」ヘビがそう言っているように思いました。
五作じいさんは、思わず「よし、よし」と言ってしまいました。
言ってしまって、たいへんなことを言ってしまったと気がつきました。
ヘビはそれを聞くと、するすると野川の茂みへ消えてしまいました。

その晩、一人の若者が訪れてきました。そして五作じいさんに、「約束のものをいただきに来ました。」と言いました。
おじいさんが、ご飯を差し出すと、「もっとおじいさんの大切なものを」と言って聞き入れません。
若者の目はだんだんすご味を増してきます。
そして、とうとう、「娘さんをほしい」と言いました。
たいへんなことになりました。家中大さわぎになりました。おばあさんは泣き出してしまいました。
けれど若者は動きません。
若者はヘビの執念深さをただよわせ、すごさを増して動こうともしません。
その時、「おじいちゃん、おばあちゃん、私はこんな星のもとに生まれてきたのです。私はあの方のお嫁さんになります。ついては花嫁の道具として、おじいちゃんが大切にしている大きなひょうたんを私にください。お酒をいっぱいつめて、それを抱いてお嫁にいきます。」と言いました。
五作じいさんとおばあさんは、娘が若者と連れだって出ていくのを泣きながら見送りました。

二人は浜辺へ歩いていきました。
大きな岩のかげに腰をおろすと、娘はひょうたんを傾けて、「さあ、たんとおあがり」と言いました。
おいしいお酒でした。
若者はすすめられるままに、ぐいぐい飲みました。やがてお酒はなくなりました。
その時、娘は言いました。
「おじいさんとの約束を守って私はお嫁になりました。こんどは私との約束をあなたが守ってください。」
そして「このひょうたんはからっぽになったので、海の底へ沈めてください。これが私の願いです。」
と言って、しっかりと栓(せん)をすると、沖へ向かって遠く投げました。
若者はひょうたんをつかむと海の底へ沈めました。けれどすぐに浮いてきます。
浮いては沈め、沈めてはすぐ浮きあがり…何度もくり返すうちに酒の酔いがまわり、苦しくなりました。
若者はがまんをして続けましたが、とうとうヘビの姿になってひょうたんを抱きながら死んでしまいました。
それを見届けて娘さんは家へ駆けもどると「私のからだはきれいよ」と言いました。
おじいさんとおばあさんは夢かとばかり喜びました。
翌日朝早く三人が浜辺へ行くと、ひょうたんを抱いたヘビが波間に浮いていました。
三人は深い穴を掘ると、そこへ大蛇とひょうたんを埋め、塚をつくりました。そしてお坊さんに丁重に読経してもらいました。
(九ケ庄村郷土史より)

この記事に関するお問い合わせ先

文化スポーツ室
〒572-8555
大阪府寝屋川市本町1番1号(市役所東館1階)
電話:072-813-0074
ファックス:072-813-0087
メールフォームによるお問い合わせ

更新日:2021年07月01日